アメリカ大統領選挙とFRB - FXプロフェッサー鈴川克哉の大人なFX

アメリカ大統領選挙とFRB

市場の注目を集めていた9/13のFOMCにおいて、FRBは住宅ローン担保証券(MBS)を対象としたQE3の実施を発表しました。
声明において、労働市場が改善するまで続けると言い切り、会合後の会見においても、バーナンキFRB議長は雇用情勢に懸念を抱いている、と述べ、現状の高い失業率には満足していない旨を述べていました。

また、MBSを買い入れ対象にしたのも、住宅市場のテコ入れを目的にしているのも理由の一つであり、景気回復のために金融政策を駆使するというFRBの手法が今回も生かされることになりました。

FRBの使命と目的


FRBはその使命(goals)として、
●雇用の最大化(the goals of maximum employment)
●物価の安定(stable prices)
●適切な長期金利(moderate long-term interest rates)
この3つを金融政策の目的(Monetary Policy Objectives)として連邦準備制度法(Federal Reserve Act)の中でしっかりと明記している中央銀行です。

そんなことは中央銀行として当たり前と思うかもしれませんが、ドイツ連邦銀行、あるいは日本銀行には物価の安定の目的は明記されていますが、雇用については一切記述がありません。

ドイツ連邦銀行をお手本に作られたECBにしてもまず物価の安定が目的となっており、インフレ率を低く抑えることが最大の使命となっています。
もちろん今回のFRBの決定に関しても物価の安定が条件となっているのは当然ではありますが、やはりFRB独自のスタンスが感じられます。

ただし、このようなFRBのスタンスは当然批判も多いわけで、特にドイツなどからは政治にすり寄りすぎる中央銀行として評判がよくありません。
ドイツ人にとっては中央銀行はゴリゴリのインフレファイターでなくてはならず、たとえ他のユーロ圏全ての中央銀行が賛成したとしても、唯一国債買い入れに反対票を投じるような、ドイツ連邦銀行こそが中央銀行としてふさわしいものなのでしょう。

アメリカ大統領選挙とFRBのスタンス


そして、このFRBのスタンスは結果的に政治的な軋轢を生むこととなります。
特に今年のように大統領選挙が間近に迫っている微妙な時になるとFRBの政策運営がきな臭いものになります。

つまり、現職のオバマ陣営にとっては失業率の低下は再選の必須条件です

対する共和党のロムニー陣営にとってはここで失業率の低下が起こると(米国的には正しいことですが)選挙対策的には、由々しき事項となります。

また、伝統的に共和党は、強いアメリカ、強いドルを信奉しています。
その意味でも、バーナンキ議長の超緩和政策、ドルの大量発行、それに起因するドル安政策には我慢ができません。
共和党はドルの価値を守るために、時代錯誤的な「金本位制」を持ち出してくるくらいの政党なのです。

9月にFRBがQE3を行った理由


バーナンキ議長としても(直前の雇用統計は悪いものでしたが)最近の米国経済指標はそれほど悪いものではないはずであり、どうしても今やらなければいけないものではなかったはずです。
10月、11月と大統領選挙直前になってからのQE3の発動は避けたいとの考慮しての9月での決定だったと思われます。

また、今の状況では、オバマ、ロムニーどちらが大統領になってもおかしくなく、11月以降の金融政策を政府に握られるのを避ける意味もあったでしょう。

これで、結果的にはオバマ大統領の再選を助けた形になったようですが、あくまでそれは表層的なものであり、バーナンキ議長も会見で警告しているように、このまま民主党、共和党の対立が続き、年末から来年初めにかけての「財政の崖」に対して議会が手を打たないと、米国経済の回復はない。

それに対してFRBのできることは強力ではない、という問題のほうが深刻なのであり、FRBなりの警告なのではないでしょうか。

バーナンキ議長の優れた点


そして、バーナンキ議長の優れている点は、市場に対し、しっかりと説明をする、ということのように思われます。
FOMCが開かれるまで、市場では様々な意見、予想が飛び交い、思惑で為替レートが乱高下することはあっても、終わってみれば、これしかなかった、と市場参加者が納得してしまう説得力が彼にはある気がします。

市場関係者が、内容的には市場の予想の範囲内であり、驚くべきものはない、と後から講釈を付けたとしても、結果的にその後の市場の動きをみれば現在採るべき最良の政策を打ち出してきたと評価されるのも当然でしょう。

ECBのドラギ総裁もしっかりと説明はしていますが、彼の場合はやや突飛なアドバルーンを上げながら、市場の反応を探りつつ、金融政策を運営してゆくタイプに見えます。(それでも、最後には、きっちりどや顔で説明はしますが・・・)

今回の決定も、雇用の安定を目指すという目的に沿った金融運営を断固として行う、という姿勢が誰から見てもわかる説明だった気がします。
関連記事
スポンサーサイト



コメント
非公開コメント